沖縄文化協会総会 講演(要旨) 沖縄国際大学にて( 2006年5月23日)


 

           沖縄の海底遺跡についての新知見

                      木村政昭


       (特定非営利活動法人 海底遺跡研究会理事長)


 小論においては、沖縄県与那国島および新たに発見された沖縄本島の海底遺

跡および関連事項について報告する。与那国島の海底遺跡に関しては1992年か

ら琉球大学海底調査団による調査が開始され、1998年に県に発見届けが出され

ている。これまでの結果によると、第一海丘の地形・形態は人為的なものであ

り、与那国の海底遺跡域にある第一海丘(遺跡ポイント)と呼ばれるものが、

本域の中心的な構造物であり、これは首里城グスクとほぼ同様の面積を占め、

形態も良く似ていて、用途もほぼ大型グスクと同様なものであったのではない

かと推定されている。ただし、その形成は1万年ほど前に陸上で行われ、後氷

期の地球温暖化により海面が上昇し水没して現在に至っていると推定されてい

た。

 ところが、2006年に海底遺跡研究会により、与那国島海底遺跡ポイントの形

成年代確認のための調査が行われ、従来のデータに加えた総合的な検討が行わ

れた結果、第一海丘に関しては、その形成は今からおよそ5,000—2,000年前の

間のいつかに陸上で行われ、しかも海面上昇ではなく円弧滑りを含む地殻変動

により急速に水中に没した可能性があることが推定されるに至った。

 ちなみに、同島陸上のサンニヌ台には海底からつながる人為的階段地形が存在するが、放射年代測定により3,000—1,500年ほど前のものと推定され、それは海底遺跡とほぼ同時期に形成されたものであり、水没を免れた部分と推定される。これら推定形成年代は、陸上のトゥグル浜遺跡およびトゥグル浜砂丘遺跡の4,400—1,600年前とほぼ一致する。また、今回新たに、島の北西海岸の海崖に大規模な階段構造やクサビ跡および巨大なドルメンと思われる形態の存在が確認された。

 一方、沖縄本島では2004年と2005年の調査により、北谷沖のそれが人工的

地形形態であることが確認された。またその形成年代は炭素年代測定により、

今から2,000—1500年ほど前に陸上で形成されたものと推定され、しかもそれ

は完新世の石灰岩を加工したものであるため、その年代は動かしがたいものと

みられる。ただし、本遺跡にしても与那国のそれにしても、それ以前の海底遺

跡の存在を否定するものではなく、より古い遺跡の証明は今後に待たねばなら

ない。









沖縄文化協会総会 講演(要旨) 沖縄国際大学にて( 2006年5月23日)