2007年10月12日
首都に真性のドーナツアイはない!?

私には、A〜C3つのドーナツアイ(のようなもの)が首都圏に認められる。この中のAは、中央防災会議が、発生する蓋然性が高くかつもっとも甚大な被害が予想されるものとしてあげている「東京湾北部地震」発生域と重なる部分が多い。そこは真性のアイなのか?

 

現在首都圏には、私が見て将来大地震の震源域になりそうな、いわゆるドーナツアイ(地震の目)のようなものが3つ認められる。

図1に円で囲んだところがそうです。ここで仮にAを東京湾北部アイ、Bを茨木県南西部アイ、Cを銚子アイとしておきます。円の実線のものは、かなり確からしいもの、波線のものは不確かなものです。赤線にしたものは、意味合いが重要としたものです。

 

1.

 

 

この円の中で、Aは中央防災会議危険な断層面があるとしている”都心部(東京湾北部)”の東半部と、Bは”茨城県南部”の西半部とほぼ一致するようにみえます。なかでも、中央防災会議の想定地震としては、M6.9ー7.3の18ケースについて諸検討を行っています。

緊急性が高く甚大な被害が予想されるのが、フィリピンプレート境界で発生すると考えられる「東京湾北部地震」です。条件が悪いと、建物全潰約85万棟、死 者1万1千人と算定されています。このような危険な地震が本当に来るのでしょうか。その検討は、地球科学者の義務ではないでしょうか。

 

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まず実例から、地震の前の地震活動の様子から検討してみたいと思います。図2は、少なからぬ被害を出した1987 年の千葉県東方沖地震の例です。東から入り込む太平洋プレートがあり、そこに相模湾側から入り込むフィリピン海プレートがぶつかります。

プレートの実線は 上面をほぼ示しますが、波線は必ずしもプレートの下面ではなく、地震を起こす力学境界と理解してください。またフィリピン海プレートについては、現在各方 面から研究が進み、太平洋プレートに衝突した後のスラブの形態は大変複雑になるようです。ここでは地震活動の行われている力学的な境界を示すにとどめてい ます。

ここで大事なことは、円で示した箇所が後で千葉県東方沖地震を発生させた場所だということです。太平洋プレートの上にのるオホーツク(北米)プレートにまで地震活動が及んでいます。

 

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図3は、上述の場所で本震が起こったことを示しています。これは基本的には現在のフィリピン海プレートでなくオホーツクプレートと太平洋プレートとの衝突によって起こったものとみられます。これより、次の大地震を予測の判定資料が一つ得られました。

それでは、現在目のように見える”銚子アイ”と”東京湾北部アイ”の通常地震活動を見てみます。図4によると、銚子アイに関してはその上のオホーツクプレート内の地震活動が活発にみえます。これは近い将来より大きな地震を発生させる歪みが蓄積されていることを示しているともとれます。

 

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さ てここで問題の東京湾北部アイの方を見てみると、その上に来るフィリピン海プレーと内に特別活発な地震活動が認められないようです。と言うことは、ここで は大地震を発生させるほどの歪みがたまっていない可能性がありそうです。では、これからたまるのでしょうか?どうもそうではないようです。ここでは示しま せんが、茨木県南西部アイも同様です。

いまここで整理すると、図1のAとBは、ドーナツアイのように見えますが、30年以内にも大地震を起こすような、いわゆる真性のドーナツアイではない可能性があります。ではなぜアイ?ができるのでしょうか。

 

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その鍵は図5にあります。これは、 マグニュード5以上の 1923年関東地震(7.9)前後の地震活動です。円で囲まれたA’とB’は図1に示したAとBの円に重なりませんか?

そこは現在アイ(のようなもの)が実在するエリアですが、これは少なくとも関東地震前後にできていたものと言うことがわかりました。 ともに東から潜り込んでくる太平洋プレート内に発生しているものため、おそらく関東地震前後にオホーツクプレーとの下に滑り込んだフィリピン海プレートが太平洋プレートを押し曲げようとすることになり発生した破壊域と思われます。

現在その傷口がA とBとしてアイのように存続しているとみてはどうでしょうか。ここまでくると、銚子アイだけに太平洋プレートと上位のオホーツクプレート内に通常地震活動 が活発で真性のアイらしいものが見られる理由がわかりそうです。図5を見ると、現在銚子アイ(C)が存在している付近にA’やB’に見られるような異常地 震活動が見られません。すなわち、図5で何もなかったところにできるアイが真性のアイなのです。

ここで、銚子アイが真性かどうかチェックするために1987年千葉県東方沖地震の例と比較してみます。図6はM≧3を見ると、本震より21年ほど前から通常地震活動が段階的に上昇しノコギリ歯状のパターンを示し、これまで新潟や南米などで見てきたアイの地震活動パターンに似ています。

 

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そこで銚子アイの地震活動を見てみましょう。図7を見ると、ノコギリの歯のようなパターンで通常地震活動(M≧2)が活発になっていて図6の本震前のパターンと良く似ています。そうなってから20年以上になっているようなので、防災上は、そろそろマグニチュード6.5以上の地震(本震)がアイおよび付近に発生してもおかしくないと用心することが望ましいと思われます。

 

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おわり

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