2007年10月18日
石垣島南方沖に大地震の目は発生しているか

沖縄県津波・高潮被害想定検討委員会が、M8 クラスの地震が石垣島南方沖で起きたと想定したら25m超の大津波が発生する、という調査結果が報告された旨地元紙(10月16日付け)で伝えられまし た。これは1771年に発生した、ギネスに載る世界最大級の大津波を想定しての試算と思われます。では、そこに現在大地震の目(アイ)ができているので しょうか。

 

図1(右図)は、1970年以来発生したマグニチュード6.5以上の震央を示しています。たまたま、波線の円で囲まれたところには発生していません。こういうところは第一種空白域の可能性が高いところとみられます。

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図2は、同期間のマグニチュード4以上の通常地震活動を示します。これによると、宮古島南方沖と西表島南西方沖にアイと思われるものが見られます。

参考までに理科年表に載る八重山地震津波(地元で”明和の大津波”)を起こした地震の震央を赤星で示しました。ここを含んだ石垣島南方沖には、私が本ブログで提唱した大地震を発生させる目すなわち”アイ”と思われるものは見当たりません。

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図3は、M≧3 の震央です。これによっても石垣島沖に目はありません。ここは、歴史地震の空白域、すなわち第1種空白域がそのまま空白域でありつづけて大地震が発生する と信じられています。しかし、本研究所の最近の研究によると、それはどうも違うのではないかと言うことになってきました。むしろ逆で、普段地震活動が活発 なところで起こる例が多いように思われます。

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図4と5は、宮古島と西表島南方の活動域を示したものです。他域で見られた段階的に活動が活発化してくると言うパターンが似ています。と言うことは、石垣島と西表島沖には”アイ”が発生している可能性があります。他例では、アイが発生して30年ほどすると大地震が発生するというパターンが良く観られました。

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図6と7は、宮古アイと西表アイを通るプレート断面を示しています。どちらもアイが現れているところは、フィリピン海プレートと宮古・西表を乗せるプレー トの両方の地震活動が活発です。これは両者のカップリングが良い、ことを現していると考えられます。これも、海側の上盤側のプレート内の通常地震活動がな い方がカップリングがよいととらえられがちです。しかし、その場合でも、下盤の潜り込みプレーと内で地震活動が絶え間なくあるのは、上盤との摩擦は大きく ないことを示しているのでしょう。

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さ て、いよいよ結論に近づきますが、石垣島南方沖を通る同じく北西ー南東性の断面はどうなっているでしょうか(図8)。どうも、どこにもアイは形成されてい ないように見えます。おそらくその理由は、その南方で1998年に発生したマグニチュード7.6の地震によって歪が解放されたため、現在の石垣島南方沖に は少なくとも数十年以内に大地震を発生させるほどの歪がたまっていないためと解釈されます。

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では、他の2つのアイはどうでしょうか、どちらも、アイの地震活動パターンと、沖縄トラフ側に推定される火山活動との2つから推定される両域における大地震発生時期がほぼ一致します。防災上、これらについては速やかに検討する必要があると思われます。

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