沖縄文化協会2008年度公開研究発表会、講演要旨

2008年7月21日、琉球大学交流会館

沖縄の地震予測と本州および中国大陸の地震活動

木村政昭(琉球大学名誉教授)*

 

 2008年5月に中国四川省で発生した大地震(M8.0)をはじめとして、日本でも6月に岩手・宮城内陸地震(M7.2)が発生し、地震に揺れている。一方、沖縄では本島南部、宮古—八重山近海で中小規模の地震が頻発している。ギネスブックに載る世界最大の津波は、1771年に宮古—八重山沖で発生した地震(M7.4)により発生した(八重山地震津波=明和の大津波)。沖縄にも近々大地震発生があり得るのか、最近の周辺域の地震データ解析を加えて予測する。

 最近の地震活動のデータは、九州—琉球列島にはおよそ100年ごとに地震の活動期が巡ってきて、現在はその最盛期にかかるところであることを示している。九州—琉球列島が地震の活動期に入ったことは、1990年以降の桜島や雲仙普賢岳などの大噴火活動も指標となる。

 過去数百年のデータを整理すると、こうして九州—琉球列島の活動が活発化するとやがて中国大陸南部の地震活動が活発化する傾向が伺える。本年5月に中国南部で四川大地震(M8.0) が発生したのは、その例と思われる。統計的には、引き続き北部にその活動が移っていく傾向が認められることから、まだ大地震が発生していない北部は要注意と言える。そしてそこには現在、数年以内にも大地震を発生する可能性のある地震の目“サイスミック・アイ”が認められる。

 一方、琉球列島ではおよそ100年間隔で大地震を発生し、これに対して本州ではその間を縫うように海溝型の巨大地震が発生する、という規則性が認められる。このような規則性は、今後どこで大地震が発生するかを考えるために重要なバックボーンとなる。2008年6月に本州東北地方で大被害を出した岩手・宮城内陸地震が発生したが、上にのべた規則性からは、現在琉球列島が地震活動期に入っているという推測と一致する。

 以上のような観点で、日本の地震空白域の検討をすると、数年以内にも大地震発生が予想される場所が選択される。それらは、首都圏および周辺、九州中部・南部、沖縄本島東岸沖、宮古島南岸沖そして台湾南東部などがあげられる。首都圏および周辺を除けば、九州以南に予想される。その多くが、2008年現在すでに危険期に入っているものとみなされる。これは、九州—琉球列島付近の地殻にストレスが集中していることを示している。そのために、その西側の中国にひずみが蓄積され、2008年の四川大地震が発生したものと推定される。

 以上、沖縄周辺はプレートの収斂域に当たり地殻変動がはげしく、従って地震活動が活発な地域であることが示唆される。近年南西諸島近海の海底にいわゆる “海底遺跡”の類が見出される。それらは、地球温暖化による海面上昇や、地震・火山活動を伴うこれまでの地殻変動などによって水没したと推定され、それらの検証も琉球列島の地震活動を明らかにするために今後重要と思われる。

 

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