1.そもそも東海地震とは何か。

 南海ー駿河湾にかけての巨大地震については、文献には987年以降すくなくとも9つ目につく。そのうち14世紀以降の6つのものについては、ほぼ100年ごとに発生しているとされている。

 しかし、東海地震の名が出てくるのは、比較的新しく19世紀に入ってからのことです。図1を見てください。まず1700年には、駿河湾から四国沖の南海トラフまで全体が割れて巨大地震を発生します。次の147年後の1854年も同様に、駿河湾から南海トラフの全域が割れました。ところがこの時は、東海沖の地震より1日遅れて南海トラフの地震が起きました。そこで、はじめて前者に安政”東海地震”と命名され、後者は安政”南海地震”と命名されました。

 さてその後、1944年に今度は、安政東海地震の発生域の西半部だけで地震が発生しました。これが”東南海地震”と名付けられ、安政東海地震の東半部にあたる部分があらためて”

東海地震”と呼ばれました。これが現在明日にも来ると言われてきたその東海地震そのものです。


2.本当に東海地震が起きるのか?

 地震の ここで、1854年の安政東海地震にしても1944年の東南海地震にしても、そのあとひきつづいて発生した南海地震は2つとも両東海地震のあとで発生していることに気づかれるでしょう。これはプレッシャーが西へかかっていったためと思われます。それが、1944年東海地震後駿河湾側に巨大地震が発生していない要因のひとつとは考えられないでしょうか。

 図2は、過去9回あった巨大地震シリーズのうち3回のシリーズに注目してみました。それは、すべて上で規定された







駿河湾よりのいわゆる”東海地震”域だけ巨大地震が起こらなかった例です。結論的に言うと、これまで、この駿河・東海地震域だけで単独に発生した巨大地震は一つもないのです。




 図3(上図)を御覧下さい。東海沖から駿河湾まで見ても、100年に一度の巨・大地震シリーズは規則的に発生し、東海域は、今回の大地震の発生で応力をすべて解放したかに見えます。それにもかかわらず, 今回の1944年東海地震後だけ巨大地震が発生するとされる根拠は何でしょうか。安政東海地震の発生以来150年間も東海地震域に巨大地震が発生していないからというのみでは、地球科学的な根拠としては疑問が生じます。ぜひ知りたいものです。

 というのは、特別これまでとちがった根拠がなければ、まず従来通り、駿河湾を含むいわゆる東海地震は、単独に起こりにくいと考えるのが自然ではないでしょうか。


3.東海地震域のエネルギー解消と富士山

 さて図2に戻ります。そうは言っても、一方では巨大地震を発生するパワーを持った東海地震域で何もエネルギーを抜かないとは考えられません。図2によると、過去2回の場合も今回と同様M7前後の中規模の大地震を発生させて来ていたのです。   しかし、それだけでしょうか。

 過去二回に共通なのは、いずれもその後、富士山の噴火が行われていることです。赤い数字は、噴火年です。富士山の噴火はそうめったにあるものではありません。これもあわせて、東海地域で歪が解放された場合にはこの地域は巨大地震発生なしにこられたのではないでしょうか。解放されない場合は巨大地震です。

 では、今回はどうでしょうか。図3をみてください。サイス・ビューによって解析したものです。震源データは気象庁が公表したものを使わせていただいています。




 図3で2009 (M6.5)とした楕円が今度の静岡県沖地震です。この図によると、予想東海地震域および周辺はM6.5以上の大キナ地震でほとんど埋め尽くされています。ただ一つ今回の地震の南東にある東南海地震の楕円との間が空白になっています。   ここが埋まると、予想東海地震域はすべてエネルギーを出し切ります。

 しかしこれを見ると、見事に空白で地震の目はできていません。ココに地震の目ができたら要注意ですが、 大きさは今回の地震と同じ程度の地震を起こす空白しかありません。しかも、地震が起こるとしても本震がおこるのは目ができてから30年先です。

 私はそこより重要なのは駿河湾の北部であると思います。よく見ると、何と富士山周辺にサイスミック・アイと同じパターンができているのです。これが地震の目とすると、今月の静岡県沖地震かそれを上回るパワーを出す力がたまっていることがうかがえます。しかし、ここは火山です、噴火というやり方で歪を解放する方法もあります。

 前2回は、図2によると1435年、1707年噴火です。まず前者は、富士噴火史に名高い青木ヶ原溶岩を流出させた巨大噴火です。後者1707年のそれはあまりにも名高い富士山最後の噴火として知られる宝永噴火です。では、今回もそのようなケースをたどる可能性はあるのでしょうか。

 駿河湾周辺の中規模地震から単純計算をすれば、1433年地震から1435年噴火までが2年、1633年地震から1707年噴火までが74年。したがって、2009年地震にそれを加えると、2011−2083年までの間に噴火を起こす可能性は否定できません。なぜならば、これは事実だったからです。


4.まとめ

 噴火は恐しいものです。しかし、もし噴火でエネルギーが抜ければ、過去のすべての例がそうだったように、東海地震はおこらないという可能性が高まります。富士山噴火に関しては、別の方法で解析していますので、それを参照していただけるとありがたく思います。